名門、ヴァインベルグ家に新しい家族が増えることになった。
10歳の女の子で、名前は枢木スザク。
増えた理由はというと、ナイトオブラウンズの一員だが、家がないのでよろしく、と。
まぁ、こういう理由だったりする。
年頃の娘が年頃の男の居る家に預けるなんて、と思ったが、相手は国のトップ。つまり、皇帝。
断れるわけ、ない。
というか、10歳のラウンズって初めて聞いたぞ。
将軍から突きつけられるように差し出された女の子はどこか頼りなさげで、ブリタニア人とは全く違う肌が覗く。
宝石のように真ん丸で綺麗な翡翠に見上げられて、思わず硬直した。
初めて見る色で子供らしくない色を称えた瞳は柄にも無く俺を捕らえた。
当たり前だが、俺はロリコンではない。
ない、と信じたい。
別に女に飢えてるわけでも、モテないわけでもない。むしろ舞踏会ではお嬢様方の人気者だ。
けれど、このスザクという少女には、何故か惹かれた。
俺とスザクの初対面は、これだった。
「ただいま、スザク。今日も元気してたか?」
肉付きの少ない軽い体を抱き上げてやれば、桜色のスカートがふわりと舞った。
抱き上げられた当の本人は落ちないように抱きついてくるものの、反応は薄い。
最初は無愛想だと思っていたが、ぽつりぽつりと呟く言葉を聞いてようやく理解した。
スザクにはブリタニアに来る前の記憶がない、という。
気がついたら、V.Vと呼ばれる少年と皇帝の前にいたのだ、と。
本来ならば不幸だと思ってもしょうがないようなことを、感情を映さないような無機質な言葉で紡いだ。
スザクは本当に”真っ白”な子供だった。
物の話し方もたどたどしくて、衣服の着方も知らなくて、食事も綺麗に食べなくて。
ただ、ナイトメアに乗らせれば超一級。
小さな体をめいっぱい使って敵を倒していくのだから、複雑だった。
一度、スザクを膝に乗せながら、スザクに戦場は似合わないと言ったら、困ったように首を傾げていたことがある。
けれど、それは俺の本音で。
こんな小さなスザクを戦場に立たせたくは無かったし、人殺しなんてさせたくなかった。
だから、普段はめいっぱい甘やかそうと極力手をかけて遊んでやるのが最近の日課だ。
「で、今日は何してたんだ?」
「…本、読んだけど」
「お、文字の勉強してるんだったな。偉いな、スザクは」
髪をくしゃくしゃに撫でながら笑顔で見つめると、小さくスザクも笑顔を見せてくれる。
それが、今の俺の幸せだったりする。
けれど、俺もスザクもナイトオブラウンズ。その仕事はナイトメアを駆って戦場を行き来することだ。
平穏な時間なんて、そう長い時間あるわけがない。
俺とスザク、そしてアーニャの3人はまだ治安が回復して間もないエリア11へと派遣されることになった。
エリア11はスザクの生まれ故郷であるだろうと思われる場所で。
もしかしたらスザクの記憶の片鱗が転がっているかもしれない、と淡い期待を抱いた。
本来の目的はテロリストの頂点であるゼロの捕獲、または抹殺だったりするのだが。
スザクの手を引いて新宿ゲットーへと足を踏み入れる。
表側とは違い、復興がまだ進んでいないゲットーには、スザクと同じ肌の色をした人々がその日その日の生活を続けている。
貧しいその生活を10歳の少女に見せるのは酷だったか、とスザクを見ると、彼女は以外にも、じっと街を見つめていた。
「なぁ、スザク。記憶探し、してみないか?ついでに、さ」
見上げてきた大きな瞳は一瞬困ったように見ていたが、やがて、小さく頷いた。
to be continu...
とりあえず序章終了です。CPはジノスザ←ルル予定です。これもシリアスになるかな。。。