スザクから放たれた言葉に、ルルーシュは思わず体を硬直させた。
は?今、この男は何と言った?子供?誰の?スザクの?誰との?
目の前の男は酷く真剣な視線を送ってきていて。
「ダメかな?やっぱり」
しょぼんとしているスザクに思わず罪悪感すらこみあげる。
いや、ダメというか…。
「その、スザク…それはどういう意味だ?」
「あ、そっか。順序が違うよね」
今気付いた、と言わんばかりに手を打つと、崩していた足をきっちりと正座に整えて、息を整える。
ルルーシュもそんなスザクに習うようにスザクを正面に据えるように座りなおした。
「君となら、良い国を作っていけると思ったんだ。それに、何より、君に僕を支えて欲しい。僕も君を支えたい」
「それは、仕事のパートナーとしてか?それなら…」
「…意地悪だな。子供の話までしているのに。公私共に、僕のパートナーになってくれませんか?」
困ったような笑みを浮かべている彼の顔は今まで見たこともないほど赤く染まっていて。
「…俺のコトなんて興味なかったんじゃないのか?」
「…正直、君を愛しているかと聞かれるとまだ分からない。けど、君に隣に居て欲しいと思うくらいには、好きなんだ」
スザクの真剣な言葉に移ったかのように、ルルーシュの頬が赤く染まる。
返事を待っているかのように見つめられて、ルルーシュは小さく息を逃した。
「…俺はそのために帰ってきたんだ。断る理由はないな」
気付くのが遅いんだ、とふん、と顔を反らすと、スザクがぱっと笑みを浮かべた。
ぶんぶん、と振られる尻尾が見えるようで。
「で、どうして子供と言う話が出てくるんだ?」
「あ、えっと、その…家族が欲しいなって思ったんだ」
「俺だけでは不満か?」
「そ、そういう意味じゃなくて!!」
子供のように慌てふためくスザクが可愛くて、思わず笑ってしまう。
「冗談だ」
「…酷いよ」
頬を膨らませるスザクは可愛らしくて、ますます笑ってしまう。
本当に可愛い。今までの冷たい表情よりもよほど良い。
これが、本来のスザクなのだろう。
「ごめん。もう笑わないから」
「ならいいけど。そうだ、ルルーシュ。プレゼントがあるんだけど…」
近くに居た侍女に命じて、用意していたのであろう、大きな箱を持ってこさせると、そっとルルーシュに差し出す。
何が入っているのだろう、と不思議に思っていると、スザクが照れくさそうに微笑んだ。
あ、また初めて見る顔だ、とスザクを見つめると、箱がカタン、と音を立てる。
それに気付いたスザクが慌てて箱を押さえようとするが、ぼこん、とてっぺんが膨らんでしまっていて。
中からにゃあ、と鳴き声が響いた。
あぁ、なるほど。中身は…
「もう少し大人しくしてくれてると良かったのに…」
中身が分かっている贈り物なんて嬉しさが半減だ、とぼやくスザクの手から箱を奪い取る。
鮮やかな和紙で飾られたその箱を開けると、真っ黒な黒猫が顔を出した。
「…お前からの贈り物なら何だって嬉しいぞ?可愛いな」
愛らしく擦り寄ってくる黒猫を抱き上げるとスザクが良かった、と微笑んだ。
「僕の処にこの子の兄弟がいるんだ。その子は白猫なんだけど」
「何と言う名前なんだ?」
「ランスロット。金色の目の男の子だよ」
連れてこればよかったね、と笑うと、黒猫がかまって、と言わんばかりにルルーシュの手に擦り寄った。
「なら、今度スザクが来る時は連れてきてくれ。その方が、コイツも喜ぶ」
「分かった。ところで、名前は?決めないの?」
「…ガウェイン。ちょっと大袈裟か?」
黒猫に問いかけると、気に入ったと言わんばかりににゃんと鳴く。
まるで言葉が分かっているみたいだ、とスザクが笑う。
笑顔のスザクを見てルルーシュが笑う。
あぁ、幸せだ、と思うと、ルルーシュはスザクの手をそっと握った。
「子供はやっぱり2人は欲しいな」
ぽつりと呟くとスザクはしっかりと首を振った。
「一人でいいよ」
「どうして?一姫二太郎と言うし…」
「男の子と女の子ならいいけど、男ばかりだったら変な争いになりかねないだろ?」
「俺達が守ってやればいい」
きっぱりと言うと、スザクはきょとん、と目を丸くした。
しばらく考え込むように唸るスザクの頭をぽんぽん、と撫でると、彼の瞳が細くなる。
「お前が守れないときは俺が守ればいい。俺が守れないときはお前が守ればいい」
「二人とも守ってやれないときは?」
「遠征なら連れて行けば良いし、連れていけなくても自分の身を守れるように教えてやればいい」
幸いスザクの武術の腕は超一級だし、俺の頭のよさも折り紙つきだと笑うルルーシュにスザクは微笑み。
「…強い奥さんを貰ったなぁ」
「今更気付いたのか?」
「うん。けど…心強いな」
ぎゅ、と抱き締められるとそのまま畳の上に優しく押し倒される。
「少し早急すぎないか?」
「…そう?けど、我慢できないんだ。君が欲しい」
耳元で少し低い声で囁かれて、ゾクリ、と背筋があわ立つ。
けれど、嫌な感じはなくて、スザクの背に白い腕を添えると、こつん、と額を合わせる。
「…仕方ないな。優しくしろよ?」
「うん。ありがとう、ルルーシュ」
大好き、大好きなスザク。
今ははっきり自覚はしていないのかもしれないけれど。
もっと愛して、激しく愛して?
お前が愛してくれるだけ、俺も愛を返すから
to be continu...